驚異的な兄の話
【驚異的な兄の話】
わたしには 4つ 歳の離れた
兄が います。
学年で 言えば 5学年 違うので
わたしが 小学校5年生のとき
兄は 高校1年生と
随分 開きが あります。
実は そんな 兄が
現在 阪大付属病院で 入院しています。
8月頃に 喉の奥に 腫瘍が 見つかり
検査した 結果 【脂肪肉腫】という
ガンの 一種とのこと。
さすがに これは ショックでした。
しかも 通常は
手足とかに 出来るものが
過去に 前例が 滅多にない
喉の奥に 出来ているとの事。
大きな 阪大病院でさえ
過去に 1度しか
その 手術経験は ないとの事。
そして 喉を 大きく 切り開き
腫瘍を 切除するので
退院後も 食事が 困難になったり
神経が 傷ついて 顔が 引きつったり
さまざまな 障害が 出るであろうという
主治医の 先生からの 説明を
家族全員で 受けました。
普段 兄は 食べることが
一番の 楽しみで
特に おにぎりと から揚げが 大好物。
主治医の先生 曰く
「多分 今後 硬い 食べ物は
飲み込めないと 覚悟して下さい」
と 手術前に 宣告を受け
さすがの 兄も ショックを 受けていました。
その後 さまざな 検査を受け
ほぼ 1週間前に 入院し
1昨日に 手術が 行われました。
もちろん 全身麻酔で
手術も 4時間ほどに 及びました。
過去に 1度しか 前例がない 手術でしたが
手術は 見事 大成功。
わたしも 母も ほっと 胸をなで おろしました。
ただ 手術室から 出てきた 兄の姿は
いろんな管が 喉から 出ており
見ていて 痛々しいほど でした。
そして 昨日も 熱が 出ており
絶対 安静のままでした。
そして 本日 早朝
出勤前に 顔を 見に行こうと
高速道路に 乗って
ふたたび 阪大病院に 面会に 行きました。
実は 阪大病院の 1階には
24時間営業の ローソンが 入っており
兄の 差し入れのため
ウエットティッシュとかを カゴに入れて
レジに 向かいました。
すると 背後から
「お! なおきか?」
と 聞きなれた声。
振りかえると そこには なんと 兄の姿が。
たくさんあった 管の 数は 減ったものの
喉から 出血している血を
抜き取るための 管とかは
依然 体から 出たままで
それらを ぶら下げて
ローソンに 買い物に 来ていたようでした。
昨日 安静にしていたので
まさか 一日で 歩けるようになって
しかも 詰め所に 内緒で
ローソンに 買い物に 来ているとは
思って いなかったので びっくりです。
まぁ それ以上に
兄も びっくりしていましたが。
よく 見ると 兄は
ただ 散歩に 来たわけでなく
ちゃ~んと 買い物も した模様で
コンビニ袋を 右手にぶら下げ
左手には 管で 繋がった
血液の袋を ぶら下げています。
「まぁ 退屈やから 散歩に 来たんや」
と 言いながら
なんとも 罰 悪そうな
苦笑いを 浮かべておりました。
そして その後 一緒に 病室に戻り
買ってきた コンビニ袋から
兄が いそいそと 取り出した物は
なんと
おにぎり と から揚げ。
「え! そんなん 食べて 大丈夫なん?」って 聞いたら
「知らんけど 大丈夫やろ。」との事。
もう 無茶苦茶です。
そして わたしが
必死で 止めるのも 聞かずに
おにぎりを ほお張り
から揚げも 食べだしました。
飲み込むときには さすがに
「イテテ」と 顔を ゆがめながら
「やっぱ おにぎりと から揚げ 最高や」
と 満面の 笑みです。
「そんなん 食べて 知らんで」と
わたしが しつこく 言うと
「今朝から おかゆは 食べて 良いことに なったんや」
「胃袋に 入れば おにぎりも おかゆになる。」
と 平然としています。
まぁ 1日で こんだけ
驚異的に 回復しているので
止めても 聞くわけは ありません。
しかし 手術後 2日目から
から揚げに 手を出すとは
相当な チャレンジャーです。
から揚げ 親善大使とかに
まさに もってこいの 人材です。
まぁ それでも 兄が 元気に おにぎりを
ほお 張っている姿に
内心は ほっと しました。
もし 吹田に お住まいの方で
阪大病院の ローソンで
血液のたまった 袋を ぶら下げて
おにぎりと から揚げを 買っている
中年男性を 見かけたら
それが わたしの 兄です。
もし 見かけても
声を かけずに
そっと 見守ってやって ください。